第117回 土浦支部例会 報告

 7月22日(日)に第117回土浦支部例会をひたち野リフレ(牛久市)で開催しました。参加者は、6名でした。

 まず、「3・11東日本大震災時の東海第二原発の危機的状況」を報告していただきました。「3・11の福島原発の過酷事故の裏側で、東海村の原発の状況はどうだったのか」という問題意識による報告でした。報告の冒頭で紹介された新聞記事には、「東海第二原発(東海村)が午後2時48分に原子炉を自動停止。全18事業所で異常なしを確認した」(2011.3.12.)、「東海村内で5マイクロシーベルトを超える放射線量を観測した」(2011.3.16)とあります。そして、報告で注目を集めたのは、県などがこのような放射線量の増加は福島に由来されたものとして処理している点です。県は、ツイッターでの「東海第二原発が爆発する」、「日立でも急上昇」などの反応に対して、福島から風で流れてきているだけなので健康には影響のないレベルと強調していたとのことです。しかし、報告者は「健康に影響がないレベル」の健康への影響はどんなものなのか、なぜ放射線の急上昇がデマなのか、自動停止している東海第二原発が爆発するというのは全くのうそと言えるのか、などの問題提起をしていました。
 報告で最も強調されていた内容の一つに、東海第二原発の「ベント」があります。「ベント」とは、原子炉容器を守るために内部の蒸気を外に逃がすことです。3・11の4時20分に実行され、20数回行われたそうです。同じ時間帯に、東海村内では、5ミリシーベルトを超える放射線量を観測しました。報告者は、この事実を関係者からの聴き取りで掴んでいます。そして、新聞社の取材で、「外部電源を2日間喪失し、原子炉格納容器を守るために内部の蒸気(放射性物質は微量)を放出するベントは不可避だった」と原電側は認めています。報告者は、「どのようにベントしたのか」、「なぜベントせざるを得なかったのか」、「蒸気に含まれた放射性物質は本当に微量なのか」などの疑問を出しています。
 今回の報告を聴くと、東海第二原発でも過酷事故寸前だったのではないかという危惧が改めてわき起こります。新聞報道によれば、現在の東海第二原発の状況は、再稼働について、原子力規制委員会が安全対策の基本方針が新規制基準を満たすと認めています。再稼働には、11月までに20年の運転延長の認可を受けたうえで県や周辺6市村の事前了解(同意)を得なければならず、実現の見通しは今のところ不透明とされています。また、原発事故を想定した避難訓練も7月に行われ、東海村から取手市に避難する様子も伝えられています。東海第二原発に関する報道に注視する必要性を感じる報告でした。
 協議では、聴き取りの方法や様子に関するものや全国のプルトニウムが東海村に集まっていることなど、多岐にわたりました。

 次に、「新高校学習指導要領を批判的に読み解く その2」を報告していただきました。今回は、前回の「総論編」に続き、高校の科目改変に関する「各論編」でした。新設科目「歴史総合」「地理総合」「公共」に関する報告で、それぞれの概要と問題点を整理していただきました。
 まず「歴史総合」については、授業方法のパターン化が進む可能性について言及していました。指導要領には、「○○などの資料を活用し、課題を追究したり解決したりする活動を通じて、……を身に付けることができるように指導する」という表現があり、アクティブラーニングの強調ともあいまって授業方法が均質化していく可能性を感じました。「主題学習」によって「歴史の学び方を学ぶ」という説明や「近現代の歴史を大観する」という「内容の取り扱い」から通史よりもテーマ学習が強調されていることが分かりました。学習内容については、「愛国心」の育成を目指す方向性や「近代化、大衆化、グローバル化」でいう特殊、特定な歴史の捉え方に問題があり、一面的な歴史の見方を克服する授業が臨まれます。しかし、歴史を学ぶ意味を見出せないでいる歴史教育の危機も叫ばれている現在、この「歴史総合」はその課題克服につながるという意見もあり、具体的な授業のレベルでどのような取り組みができるのかを検討する必要性を感じました。
 また、今まであまり議論の俎上に乗らなかった「地理総合」についても解説がありました。報告者が心配していたのは、「誰が教えるのか?」ということでした。「地理総合」では、地理情報システムで現代世界を捉える学習が期待されており、このような学習を担当するには技術取得などの専門性や学習環境の整備が前提になるとのことでした。また、「持続可能な社会づくり」が日本の地域社会のみに矮小化されており、国連の持続可能な開発目標の期待を裏切るのではと危惧していました。「持続可能な社会づくり」が自国中心のものに矮小化されているとの指摘は注目すべきであると思いました。
 そして、「公共」については、何と言っても道徳的な性格を問題にする必要があり、学習内容に偏りを感じました。たとえば、現行の科目「現代社会」とは異なり日本国憲法の基本原理を学ぶ機会がありません。立憲主義・権利の理念を学ぶことができず、政治を系統的に学べない、と報告では指摘しています。法や規範、国家主権、領土、安全保障と防衛など、いわゆる国家への貢献が期待されている文脈で構成されている科目なので、国家重視の科目であるということがよく伝わってきました。
 3科目に通底している内容として、領土に関する内容が挙げられます。指導要領には「竹島や北方領土は我が国固有の領土」、「尖閣諸島については領土問題は存在しない」としています。政府見解を唯一の解答とする問題点が伝わってきました。これらは、あくまでも学習指導要領レベルでの話ですので、詳細は、指導要領の解説や具体的な授業で確認していく必要があります。解説は文部科学省のHPで確認することができます。ぜひ、ご確認していただければと思います。
 協議では、「公共」の評価や入試はどのようになるのか、指導要領にある「見方・考え方」とはどのようなものなのか、現場の裁量はどうなっていくのかなど、活発に意見が出されました。